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#141 2021年11月 モビリティの電動化推進と注意

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11月も半ばを過ぎましたが、比較的穏やかな日中が続いてきました。
おそらく皆さん同じと思うのですが、やはり「暖かいのが好き」という方が一番多いのではないでしょうか。
でもこれからはいよいよ冬も本番になってきます。コロナやインフルエンザに十分に気をつけてお過ごしください。


自動車の電動(EV)化

日本で自動車のEV化が始まったのは、誰でも手に入れることができるという意味では、1997年にトヨタ自動車から発売になった「プリウス」が最初と言えます。

もちろんそれ以前にも限定的な使い方では電気の力で動く四輪車はありましたが、一般向けに市販されるものではありませんでした。

プリウスは電気モーターの力で動くということでは電動化されているとは言えますが、ガソリンエンジンは変わらずに搭載され、そのモーターで使う電気の元となる電池(動力用バッテリー)への充電と、駆動するモーターを補助するための「動力」としても使われています。
つまり動くためにはガソリンエンジンを回さないと走れないということになります。

注目の特徴はその燃費性能で、同じ大きさ(排気量)のエンジンと比べると、同じ量のガソリンで走れる距離を大幅にのばすことができたということです。
燃費が良いということは、少なからず環境性能は良くなっているということになります。

ただしこれは純粋な意味での電動化された自動車ということではなく、「ハイブリッド(hybrid)」と呼ばれています。
ハイブリッドとは訳せば「二者の融合」という意味で、ガソリンエンジンと電気モーターを融合させたタイプの動力ということです。
ですから、すべてを電気の力で動く電気自動車(EV車)とは区別して、ハイブリッド車は「HV車」と呼ばれています。
またメーカーによって「PHV車」「PHEV車」と呼ばれている車種があります。
これは外部電源からも充電できるHV車ということで、電気モーターだけでの走行もできることから、燃費性能に優れた面がありますが、エンジンを搭載していることから、動力用電池だけで動く純粋な電気自動車(EV車)とは区別されます。


電動化への推進

世界的な脱炭素化、電動化の流れの中で、日本政府は「2035年ガソリン車の新車販売禁止」の方針を打ち出しました。
これには純ガソリン車と純ディーゼル車が含まれ、新車で販売されるのは「EV車」「FCV車*」「PHV車」「HV車」が該当します。

* FCV車とは燃料電池車と呼ばれ、ガソリンでエンジンを回すかわりに、燃料電池で「水素」と「酸素」の化学反応で発電した電気エネルギーでモーターを回す構造です(トヨタのミライ等が該当します)。

この4車種を見ると、すべてに共通する部品が動力用の電池(バッテリー)が必要ということになります。
そして航続距離を長く保てるこの電池の技術開発が、「ガソリン車の新車販売禁止」を後押しするキーになると言われています。

(現在では400km前後の航続距離になってきています)


移動手段の電動化

とは言うものの、街でだいぶHV車やPHV車を見かけるようになりましたが、私たちの一番身近な自転車でも「電動」のものが増えてきました。
正確に言うなら「電動アシスト自転車」という呼び方になります。
(警視庁のWEBサイトでは「駆動補助付き自転車(電動アシスト自転車)」という呼び方で表示されています)

この電動アシスト付き自転車の特徴は、「電動機(モーター)と人の力が独立したままでは作動せず、もっぱら人の力に対する補助力として作用する …(中略)… 法律上『軽車両(自転車)』に該当します」ということから、一般の自転車と同じ扱いがなされることになります。

つまり… 「道路の左側を走る」「自転車の通行を許された歩道を走ることができる」「交通標識/交通ルールを守る」という点で、特別な許可や乗り方が必要な道具ではありません。


ん? 電動自転車って?

同じ警視庁のサイトに「ペダル付き電動自転車」についての説明があります。
そこでは、「電動で自走する機能を備え、電動のみ、又は人力のみによる運転が可能な自転車」とされています。
これは法律(道路交通法)上の『原動機付自転車(原付)』にあたり、「電動アシスト付き自転車」とは全く違うものになります。

つまり、ペダルの有無に関わらず、電動機能(モーター)だけの動作で自走できれば原付バイクと同じ扱いになるということです。
言い換えると、該当する免許の保持原動機付自転車の通行方法ヘルメットの着用法律に適した保安基準の装備自賠責保険への加入標識(ナンバー)の取得 といった条件を満たさずに行動を走ることはできません。
また区分された歩道も含み、自転車専用道も走ることはできません。

【くどいようですが、一般的な 『電動アシスト自転車』 はこの規定に該当しません のでご安心ください】


電動自転車/電動キックボード等々

世界中で移動手段(機器)のEV化が進む中、電動キックボードというのもネットショップで多く見かけるようになりました。
外国では運転免許等の所持が無くとも(或いは子どもでも)乗ることができる国もありますが、上記のように 「電動で自走する機能を備え、電動のみ、又は人力のみによる運転が可能」なものは、日本では原動機付自転車の扱い になり、16歳以上の最低でも原付免許がなければ乗れないものです。
従って、上記の緑色の下線で示したような条件を満たしたものでないと公道を走ることができないものになるので、購入の際には十分な注意が必要です。
(私有地内では乗車できますが、公道を走ることはできません)

免許取得年齢に達しない16歳未満の人はもちろん、16歳以上の人であっても、免許を所持していなければ 無免許運転 になります。
また、ライト、ウィンカー等が整っていなければ 整備不良 となりますし、ヘルメット着用も義務になります。
公道を走るに当たっては、様々な法律上の制約がありますので、手軽な乗り物ではありますが、気軽な気持ちで購入するにはハードルが思ったよりも高い乗り物と認識した方が良さそうですね。


※ WEB版での追記 [2021.11.24]

今後、諸交通機関が化石燃料から電気を燃料とする方向へ向かうのは、#140 2021年6月 SDGs でもお知らせしたように、世界的な傾向と言えましょう。

それは地球温暖化の観点からも、二酸化炭素の排出を抑えていかなければ、石油・石炭の枯渇はもちろん、土壌・緑地の砂漠化、海面の上昇による海岸線の退化など、様々な先行きを思えば、向かうべき方向と言えます。

そういう意味では、いまこの21世紀はその過渡期にあって、これをどう転換していくか、そのための新しい技術が日々生まれてくる中でどう対応していくかが問われている時代と言えます。

 

一方では、解釈の変更だけでは現行の法律で対応しきれない部分も出てきています。

グレーなゾーンになる部分です。

 

上記で例にあげた「電動アシスト自転車(電気動力だけでは自走できない自転車)」も、メーカーがその規制を守る限りは出力の小さい「補助モーター」の搭載で作られていくことでしょうし、まず人力で動かすことが必要であり、その補助動力でモーターがあると人々が理解していることが前提となります。

 

こんな話があります。

お母さんが幼い子どもに「マッチ売りの少女」を読み聞かせしました。(マッチを一本擦るたびにいろんな夢が出てくる有名なあの話です。)

読み聞かせが終わった後に、子どもに聞かれました。

「お母さん、『マッチ』って何?」

言葉が通じないというより、「マッチ」という道具が過去の遺物になってきている証拠でしょう。

 

時代が進んだ時に、世の中から電動アシストのない自転車が同じように過去の遺物になっていく時に、人はどんなことを思うのでしょうか…。

「どうして自分でこがないといけないの?」
「自転車ってこぐものなの?」

 

いやいや、それは原付ですよ。

免許が必要ですよ。 ナンバーが必要ですよ。 道路交通法を守ってください。

 

それを説明できるか、法律が変わるのか、一定の責任能力を問えるのが16歳以上としたらそれ未満の人たちは「自分でこぐ必要のない自転車」に、どういう基準で乗ることができるのかと…。

等々と考えると明瞭な答えが出てきません。

なぜなら、現行の法律を順守するなら、普通の自転車(人力だけのもの、電動アシスト自転車)でさえも、法律(道路交通法)に違反した乗り方が横行していて、なにが正しい乗り方なのか不明瞭になってきているからです。

 

先日ネットの記事に、自転車で交通違反切符(赤切符)を切られた、という話がありました。

どういうことかというと、

1 自転車が歩道がある道路の車道(の左側)を走ってきた。

2 前方の交差点(おそらくスクランブル交差点)の歩行者用信号が青(車道側は赤)だったので、そのまま(自転車をこいだまま)横断歩道内を進行した。

 

先にも述べたように、自転車は道路交通法上『軽車両』に分類されます。

したがって、守るべきは自動車と同じ車道側の信号機であり、歩行者用信号ではありません。

もし歩行者用信号で渡ろうとするなら、一旦自転車から下りて押して歩かなければなりません (押す限りは「歩行者」の扱いになります)。

 

でも、歩行者用信号でそのまま横断するという渡り方って、おそらく誰でもやっていますよね?

その交差点を右折するしようと思っている時は、手前の横の横断歩道の信号で右へ横切って、時にはそのまま右側を自転車で進行しますよね?

軽車両の通行は道路の左側と定められているので、横断歩道の通行と右側通行で二重の違反を犯していることになります。

 

でもこの知識というのは、自動車の運転免許を取る時に自動車教習所で初めて習う知識であって、それまでは口伝えで聞いても、どこかで教わる事の無い知識です。

今回テーマにしたかったのは主に後半部分で、モーターがついて自走できるキックボードなどを使いたがる年齢層を鑑みると、彼らがこの知識(道路交通法はもちろん、免許が必要であること等)をまったく知らずに公道を走ってしまうことの怖さです。

怖いのは、『知らない ≒ 自転車と同じ ≒ 歩行者みたいなもの』 と思っている人がそれを運転する怖さと、万が一事故が起こった時に、相手の怪我に対する責任が本人の想像以上に大きなものであるという自覚を持てないままだろう、ということです。

 

くれぐれも、そういう点の認識を幼い子どもまでも教えてあげないと、(歩道を含めて)道路は一層の無法地帯になってしまうことが危惧されます。

 


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