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#134 2020年12月 南極の氷山

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オリンピックを楽しみに迎えた2020年が、コロナの影響でこれほど暗い年の瀬になるとは思ってもいませんでした。

とうとう収まることを知らずに年末を迎える今も、感染に対して注意をおこたることなく、少しでも明るい気持ちで2021年を迎えられますように!


南極の氷山

12月2日のネットニュースで、とても大きな南極の氷山が、南極から大西洋に向かって漂っているということが配信されていました。

その大きさはおよそ長さ約150q×幅約50qという大きなサイズ!
ほぼ同じような大きさで言うと、「静岡県が海を漂っている」ような大きさです。

今後の動きでは、大西洋の南端に位置するサウスジョージア島に衝突する懸念がされています。

(現在地は同島の南西約250qの海上)

 

と、この辺までが各ネットニュースに出ていた記事なのですが、この氷山も急にこの場所に現れたわけではないので、少し掘り下げて調べてみると、これから先の地球の事を思いやらないと、これからもっと大変なことになっていくな…と実感させられました。


A-68A

この氷山には「A-68A」という名前が付けられています。
このA-68という名前は、アメリカの国立アイスセンターでつけられたもので、当初のA-68が3つに割れたために、母体の大きなものにA,その他の二つにB、Cが割り振られました。(その後にCは消滅)

 

この大きな氷山は、2017年の7月に、ラーセン棚氷(たなごおり)に入った割れ目から切り離され、氷山となりました。

棚氷とは、大陸から長い年月の間に海へと押し出された氷河や氷床という氷河よりも大きな氷の塊で、このように南極大陸から地続きになっていた棚氷から氷山として分離することはよくある出来事です。
しかし、今回のA-68Aの大きさは、過去最大級のものと言われています。
そしてさらに懸念されるのは、この氷山に住むペンギンやアザラシといった自然の生態系への影響と、図にあるサウスジョージア島にほぼ同じサイズのA-68Aが、近いうちに同島に衝突するか、または近くを通過する可能性があることです。


サウスジョージア島

イギリス領であるサウスジョージア島は、1675年にロンドンの商人アントニー・ロシェが見つけたと言われ、古地図では「ロシェ島」と呼ばれていました。
1982年にアルゼンチンとイギリスの間で起きた「フォークランド紛争」の時に、一時アルゼンチン海軍が正式にこの島を併合しましたが、すぐにイギリス軍が奪還しています。

この島は、ゾウアザラシやオットセイ、オウサマペンギンの繁殖地で、位置する場所がちょうど南極大陸から赤道へと向かう潮流の中にあるため、常に氷山の漂流と隣り合わせに位置している宿命にあります。

過去には、2004年にA-38Bという氷山がサウスジョージア島の沖を漂流し、多くのアザラシの子どもやペンギンに被害を及ぼしました。
また2000年に漂流を始めたA-15という今回のA-68Aよりも大きな氷山は、2018年まで漂流を続け、赤道近くで消滅しました。


生態系への影響

今回話題となっているA-68Aは、大きさこそ150q×50qと広大ですが、その厚さは200mほどと推定されています。
そのためもしこのままサウスジョージア島に衝突するようなことがあると、氷山が島に乗り上げる可能性が高く、そこに暮らすアザラシやオットセイ、ペンギンといった生き物が被害にあうことが考えられます。

これらの生き物は海に住む魚が主食であるため、海へとたどり着くことができないと、餓死してしまう可能性が指摘されるだけでなく、サウスジョージア島がそれらの生き物の繁殖と子育ての地でもあるため、彼らの繁殖も危ぶまれます。

南極では、今年の2月(南半球では夏)に過去最高となる気温18度を記録しました。
それは間違いなく地球温暖化の影響といえます。
南極の氷の減少率は最近のわずかな期間だけでも3倍になっており、それだけでも世界の海面は3mm(わずか3mm 、されど3mm )上昇したと言われています。


でも悪い事ばかりではないかも…

ペンギンたちにとっては災難となるかもしれないA-68Aのサウスジョージア島への接近ですが、見方を変えると一概に悪い事ばかりではないかも知れません。

というのは…

長い期間に氷山に閉じ込められていた大気中のチリやホコリは、氷が溶け始めたことで海に流れ出し、プランクトンの発生を促します。
そうなると、魚類が寄ってくることとなり、それを捕食する鳥や他の生き物が集まってきます。
この新しい食物連鎖ができることによって、新しく違った生態系が生まれると考える説も一方では言われています。


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