#129 2020年7月 永久凍土 |
ウーン… 毎月の冒頭に書くご挨拶でも、コロナの話題からなかなか離れられません。 今後も緊急事態宣言や東京アラートが発効/中断を繰り返すのか、それとも少しは落ち着きを取り戻していくのでしょうか。 「自分の身を守るのは自分」というのを心に置いて、暑い夏を過ごしてください。 シベリア連日聞こえてくるコロナの話題から少しは離れたいなと思って、いろいろと面白そうな話を探しています。 その中で、暑い時期なので少しは涼しい話題になるかと思って、「シベリア」の話題でも…。 とは言いつつ、最後はまた暑い話に落ち着きそうなのですが。 そのシベリアといえば、カナダ北部と並び北極圏に近い極寒の地というイメージがあります。 そして、何万年も前には巨大なマンモスが生息し、絶滅したのちには永久凍土(タイガ/ツンドラ)と呼ばれる地面の下に埋もれました。 そのマンモスの牙が、現代では掘り起こされ売買されています。 実はそれ自体は法律の抜け道みたいなもので、動植物を保護するワシントン条約で禁じられているのは現存する象牙の取引で、絶滅したマンモスの取引には適用されません。 いうなれば化石の取引ということになります。 (それを隠れ蓑に「マンモス牙」という名目で象牙が密輸されるケースも後を絶たないのですが) 永久凍土って?中学・高校で地理や地学の授業で 「シベリア(現ロシアの西北部)は溶けることのない永久凍土に覆われた地」 と習った覚えがあり、当時は 「一面雪とも氷ともいえない真っ白な不毛の土地」 というイメージを持ち、第二次世界大戦でシベリアで抑留生活を送った人たちは毎日氷のような硬い地面を(ちょうど氷を割るように)掘らされていたのだと想像していました。 「永久凍土」という言葉には、おそらくそういうイメージを持っている人が多いことだろうと思います。 ところが実際の永久凍土というのは、「タイガ」とは北方にある針葉樹(松や杉のように針のように細長い葉っぱ)の林で、「ツンドラ」とはさらに北に拡がるほとんど木が生えない地域で、そのどちらもが「永久凍土」の層の上に拡がっています。 この永久凍土層と樹木の間には「活動層」があり、夏の間はこの「活動層」は溶けますが、下に拡がる、凍土氷(アイスウェッジ)というくさび型の氷が地中千メートル近くまである「永久凍土」が存在しています。 凍土の下のマンモスの牙永久凍土というのは、「土壌の温度が0℃以下の状態が2年間以上続いている土地」と定義づけられています。 ただし、夏の間は表面が溶けるところも多く、ちょっといままでの「凍土」というイメージとは違ってきます。また凍っているのは土中の水分で、土そのものが凍っているわけではありません。 (英語から訳した日本語の「永久凍土」は、中国語では「多年凍土」となるので、そちらの方がイメージに近いかも知れません) さて、ある意味コロナよりも大きな21世紀最大のテーマである「地球温暖化」は、シベリアの地にも影響を与えています。 このシベリアの地形も、ずっと平坦に続いているわけではなく、崖や谷などの地層が見える場所も多数あります。 まともにマンモスの牙を探そうとすると、凍土は活動層の下にあるので相当掘り下げないと見つかりません。 しかし、海岸の崖などではマンモスを長年閉じ込めていた永久凍土が溶けだし、マンモスの牙が露出するようになって見つかりやすくなってきました。 そしていま、彼の地ではアメリカ西部のゴールドラッシュのようにマンモスの牙が一大ビジネスになっています。 その背景には、 1.ワシントン条約(に制約されない)、 2.地球温暖化(で見つけやすくなった)、 そして 3.中国富裕層への売却(で高額の取引になる)といったことが挙げられます。 なんでも、4mにもなるマンモスの牙には数千万円の値段が付けられることもあるそうです。 このまま温暖化が進むと?シベリアのように「どこを掘っても永久凍土」という土地は連続永久凍土と呼ばれます。 この連続永久凍土を調べることで、地球温暖化が確認できるといいます。 タイガに生える針葉樹は夏に溶けた土中の水分を摂取して育ちますが、土壌の温度が+1℃になって水分が溶けだすと、その水分は地中を流れ、水分が足りなくなり地表では木を枯らすことにます。 また溶けて流れ出した水は川や湖を増水させ、溶けた地中の凍土やアイスウェッジが減ることで陥没を生み、地形を変えていきます。 もしこのまま温暖化が続いて、数千年後に地球を宇宙から見た時には、すべての永久凍土が溶けた後に残った、巨大化した北極海であるかも知れません。 |
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