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#126 2020年4月 ペストの復習

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今月は、かつて流行ったペストを復習してみようかと思います。


ペストはいままでに4回流行

今回のコロナの流行が地球を巻き込む流行となったことで、WHOがパンデミック宣言しました。

いままでパンデミックと認められるものの多くは、古くはコレラや天然痘、ペスト、それらの対応が進んだ20世紀以降ではインフルエンザがあります。

インフルエンザでは、スペイン風邪、香港風邪(香港A型)という名前に聞き覚えのある方もいらっしゃると思います。

人間と病原菌とは、常に新しいウィルスとの戦いの歴史であって、もちろん現在でもペストやインフルエンザでも感染すれば大変なことになるのですが、それでも既知の病気には効果のある薬が開発されて対応できるようになってきています。

問題は新種のウィルスが出てきたときに、即時効き目のある薬を処方できず、様子をみていないとならない期間があり、その間に亡くなる方が多数発生することです。

今回のコロナウィルスについても、現時点で感染したかどうかの確認は検査薬でできても、ウィルスを根絶できる薬がないというのが現状で、製薬会社や医療機関の方々が必死の努力で発見・開発を進められていることでしょう。

過去に多くの方が亡くなられた(パンデミックと言われるような)流行病の代表的なものとしては「ペスト」があります。

一説では有史以来4回のペストの流行があったと言われていますが、最初は6世紀に東ローマ帝国で流行しました。
それからしばらくの間は記録されていませんが、2回目の流行は14世紀に黒死病と言われたアジアからヨーロッパにかけての流行、3回目はロンドンの大疫病と言われた流行です。

最後に記録されたのは19世紀にアジアで発生した流行になります。


原因が分からないから流行

現代ではペストはペスト菌で感染するということは常識になっていますが、ペスト菌というウィルスが発見されたのは、19世紀末に最初に北里柴三郎によってでした。

それまでの過去の時代ではその原因が分からず、また迷信などによっていろいろな説があったと言われています。

知っておかなければならないのは、感染の過程はウィルスの種類によって異なるということです。

ペストは「ノミ〜ネズミ」で感染したネズミから再びノミを介して人を吸血して感染したと言われていますが、他説では「ノミ・シラミ〜(必ずしもネズミに媒介の原因があるのではなく)ヒト」への感染の可能性も指摘されています。

現時点でコロナウィルスは、最初の何が発生原因で、どういう経路で蔓延しているのか、はっきりと分かってはいませんが、人から人へ飛沫感染や接触感染で広がっている(のが濃厚な原因ではないか)と言われています。

そう考えると、猫や犬などのペットへの感染は当初は言われていなかったのですが、わずかな例ではありますが、ペットの感染が見つかっています。

これは、感染した人をペットが舐めたりしたために、ヒトからペットへうつったのではないかということが疑われています。

ということは、そのペット→ノミ→よその家のペットへの感染の可能性も考えられることで、そういった点も注意しておくべきことかと思われます。


ペストの時の死亡者数

 

年代

場所

名称

死亡者数

541-542年

地中海

ユスティニアヌス

2500万人

1347-1352年

アジア・ヨーロッパ

黒死病

7500万人

1665年

イギリス

ロンドンの大疫病

7万5千人

1855-1896年

アジア・ヨーロッパ〜アメリカ大陸

特になし

1000万人

 

ここでちょっと注目しておきたいのが、表の死亡者数です。

たとえば「黒死病」と言われた中世ヨーロッパでの流行の時に7500万人の人が亡くなったのですが、この時は現代のように60億人の人口ではありませんでした。

当時のことですので、アジアやアフリカの人口は未知数だったと思いますが、ヨーロッパだけの人口では4億5千万人だったので、約20%ぐらいの人が亡くなっているということです。

もちろん、医療体制や病気に対する知識が現代とは異なるために、現代ではコロナウィルスで人口比が変動するほどの大量の死亡者が発生することは考えられませんが、一度収拾のつかない状態になってくると、爆発的に危険な状態が広がる可能性がまったく無いとは言えません。

東日本大震災の時の津波のように、小さな人間ができることは限られているのかも知れませんが、少なくとも自衛できること(マスクや手洗いの励行、人ごみに寄らない)は考えられる限りしておかなくてはなりませんね。


【WEB版の追記/2020.04.22】

先月の【WEB版の追記】でもご紹介したアビガン®錠について。

アビガン®とはインフルエンザの薬として富士フィルム富山化学という会社で開発していたものの、時流に乗りきれずにその後にエボラ出血熱に効果があるということで注目された薬でした。

(詳しくは #071 2015年3月 富山化学という会社 をご覧ください。)

この薬が今回のCOVID-19に効果があるのが見込まれてきたために、100例を対象に6月末をめどに治験を終了させるということです。

アビガン®(正式名はファビピラビル)はインフルエンザの薬としては2014年3月に医薬品として承認を受けていますが、今回のコロナウィルス(COVID-19)に対してはまだ効果を立証されていません。
しかし、インフルエンザと同じ種類のRNAウィルスであるCOVID-19に対して、同じような効果が見込めるのではないかということで、さっそく治験が始まりました。

アビガン®の開発には富山化学と富山大学の白木公康医学部名誉教授が携わり、中国での臨床実験で高い改善率が報告されていることから、COVID-19感染者への使用開始を主張してきていました。

一方ではアビガン®の副作用についても報告されており、とりわけ妊婦への使用については使ってはならないなど、制約事項もあります。


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