Now Loading...

#102 2018年1月 アイスジャム洪水

前の画面に戻る


今年の冬は

「夏が暑ければ冬が寒い」とも言いますし、「夏が暑いのも冬が暖かいのも異常気象のせい」とも言えるかもしれません。

が、実際にはその年の冬になってみて、初めて「寒い冬」「暖かい冬」というのが実感できるのかも知れませんし、また実気温とは別に一人一人が感じる体感温度でも、暑い寒いは変わってくるものです。

特にここ数日は二十四節気の「大寒」にもあたり、一段と寒さの厳しい時期にくわえ、今年の冬は寒さも一段と厳しい気がします。

(二十四節気については #004 2009年2月 二十四節気の話 をご覧ください )

 

この寒さ(寒気/寒波)の一番のもとになるのが、北極・南極の上空にできる「大規模な気流の渦=極渦(きょくうず)」で、ポーラーボルテックス とも言われます。

これは上空数千メートルできわめて冷たいジェット気流で、一年のうちでも冬場に勢力がもっとも強くなります。

この極渦で生まれる寒気は、通常はシベリアや中国の国土にかかった辺りまで降りてくるのですが、まれにもっと下がってくることもあります。

天気予報で「寒気の様子を見てみましょう」という時に出てくる図がそれです。

 

この時に、「上空1500mに-9℃の寒気があり…」と言った時には、それよりも【÷100×0.6】の分だけ地表の温度が高くなるため、大体の地上の気温が予測できます。

これは地表から100m上がるごとに気温が0.6℃下がるためです。 

(上の例=1500m に -9℃なら、地表は9℃高い 0℃になります=ですから、「1500m、-9℃… 明日はここは0℃だな」ということです)

(関連記事として #065 2014年9月 寒気の到来で上空の大気が不安定… も併せてご覧ください。)

 

そして一つの目安になるのが、「上空1500mの -12℃の寒気」で、これは大雪に警戒が必要になるレベルです。

この大雪という点では、太平洋岸の地域でもう一つ注意しないといけないのが、「南岸低気圧」という冬から春にかけて発生する日本列島南岸を発達しながら東へ進んでいく低気圧です。

 

低気圧は周りの空気を吸い込むため、列島の南側を通る時に北からの風を取り込もうとします。

冬に日本海側(関東地方から見ると北の方)を低気圧が通る時には日本海側に雪を降らせますが、関東地方の側には温暖前線を発達しているので、湿った太平洋からの南風が入るため、比較的気温があがります。

ところが列島の南岸を低気圧が通る場合は、西側に発達する寒冷前線の付近で北風・東風とともに寒気を巻き込んでくるので、関東地方をはじめとした太平洋岸に雪(特に大雪)を降らせることになります。


アメリカで記録的な寒波

今年のお正月は、初詣に出かけた時の体感温度からすると、だいたい平均的な寒さだったように思います。

ところが、アメリカではニューヨークやボストンといった東海岸の都市部で、氷点下20℃にもなろうかという寒波が襲ってきていました。

新年を迎えた1月1日の全州の記録では、カリフォルニアやフロリダといった暖かな地方を除いては軒並み氷点下二桁の気温を記録しました。

ニューヨークで氷点下24℃、中央部のサウスダコタでは氷点下48℃でしたから、想像を絶する気温だったと言えます。

地球の長い歴史の中では、何度か氷河期というものがあり、前回の大きな氷河期の時には恐竜が死滅し、そこから生き残った哺乳類の時代が始まりました。

この氷河期は大きな周期で繰り返しやってきますが、「今がすでに氷河期が始まろうとしている」のか、あるいはこれが「ちょっと寒い普通の冬」なのかは、あと数百年か数千年か数万年した時にわかることかも知れません。

あるいは、単なる大寒波と呼ぶ程度のものかも知れません。

 

ただこれが冒頭に書いたように、「夏が暑ければ冬が寒い」という言葉通りに、地球の温暖化の反動が冬の寒波と関係があるなら、もっと私たちは真剣に地球環境を考えなさいという警鐘なのでしょう。


恐ろしき大洪水

この年末年始にアメリカを襲った記録的な寒波・大雪をもたらした原因は、先ほどのポーラーボルテックスの影響でした。

北極から北米大陸に流れ込んだ寒気は、平年の気温を15℃〜20℃も下回らせ、さらに台風並みの低気圧が発生したために大雪(吹雪)の被害も続出しました。

ところがその後に急激な気温の上昇があったために、もう一つのとんでもない災害を引き起こしました。

 

それは「アイスジャム洪水」です。

氷点下二桁という環境の中では、流れている川も凍ってしまいます。

川の水は表面が凍ってしまっても、氷の下を流れ続けていますから、今回の大寒波で上流で厚く凍った川でも、気温の上昇で今度は融けて流れ始めます。

これらは流氷のように川下へと流れてくるのですが、川の流れも決して一定ではなく、流れの遅いところに差し掛かると、厚い氷が川を詰まらせて流れをふさいでしまいます。

そうなると水の流れる部分が小さくなってしまいますので、急激に水位をあげて洪水を引き起こします。

この氷が詰まって流れをせき止めてしまう現象を「アイスジャム」と言います。

 

昭和36年に日本でも、北海道北部の天塩川ではこのアイスジャムが起こっています。

この時はアメリカのケースとは違い、春先になって上流に張っていた川面の氷が解けて川を詰まらせたものでした。

その後しばらくは大きな被害はありませんでしたが、平成になってからいずれも気温上昇による原因で数回のアイスジャムの被害が出ています。


前の画面に戻る

BACK

MENU

FORWARD