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#027 2011年5月 原子力発電 ってなに…?

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3月11日の東日本大震災は、多くの爪あとを残しましが、人間の持つ底力は計り知れないもので、日々のニュースでは、東北の各地で復興に向けて頑張り、励んでいる人々の姿が伝わってきます。

そんな人たちをあざ笑うかのように、福島の原子力発電所の事故の後始末は、遅々として進まないばかりか、ここに来て私たちが知っておかなければならなかった情報が、まるで出し惜しみをしていたかのように、少しずつ漏れ聞こえてきています…。


原子力発電 ってなに…?

そもそも、原子力発電はどういう仕組みで発電をしているのでしょう?

 

原子力発電の仕組みを簡単に説明すると、核分裂反応で発生する熱を使って水を沸騰させ、その蒸気でタービンを回す力で発電機を回して発電 をしています。

これが火力発電の場合は、石油や石炭、液化天然ガスといった燃料を使って蒸気を発生させ、その蒸気でタービンを回す力で発電機を回して発電をしています。

タービンとは風車のようなもので、風の代わりにこの蒸気を使って風車を回転させ、この回転を発電に利用します。

つまり、原子力発電と火力発電は、発生した蒸気でタービンを回し発電機で発電するという点で同じ仕組みを利用しているということになります。

蒸気を使うという点では蒸気機関車(SL)も同じで、こちらはタービンの代わりに往復させるピストンで、力を得ています。

 

原子力発電=「原子力」という言葉を聞くと、私たち日本人はいやでも1945年8月の広島と長崎の原子爆弾を思い出します。

思い出すのは爆弾の爆発した姿ばかりではなく、その後に様々な後遺障害として残った原爆症を考えてしまいます。

小学校・中学校の理科を少し思い出してみると、世の中にある様々なものを細かく細かくしていくと、最後は「分子」から「原子」になるということを習いました。

この原子をさらに分裂させることで私たちは膨大なエネルギーを得ることを知ったのですが、このエネルギーを爆弾にすれば「原子爆弾」になり、平和利用を考えようとすれば「原子力発電」ということになります。

 

原子力発電での核分裂反応において必要(重要)なことは、核分裂反応を制御することです。

核分裂反応の制御とは、

(核分裂の)開始

持続(臨界)

停止

を自由に行なうということです。

この「核分裂反応を制御できる」ということが原子力発電と原子爆弾を分ける大きな違いになります。

そして、この核分裂反応を制御する装置が原子炉 ということになります。

 (原子爆弾は無秩序に連鎖的に核分裂を起こさせることで爆弾としての威力を高めるのですから、「核分裂を制御」する必要はありません)

 

原子力発電に使用される原子炉にはいくつかの種類があります。

原子炉の種類は、減速材と呼ばれる中性子(原子の構成要素)の制御を行う素材と、冷却材と呼ばれる原子炉から熱を運び出す素材の2つによって分類されます。

減速材としては、黒鉛、重水、軽水などがあり、冷却材としては、炭酸ガスや窒素ガスなどのガス、重水、軽水などがありますが、現在の日本の原子力発電では、減速材、冷却材のどちらとも軽水を使用しています。

この軽水を使う原子炉を「軽水炉」と呼んでいます。


メルトダウン?

過去にチェルノブイリやスリーマイル島で起きた事故の時にも、「メルトダウン」の可能性という形で、「メルトダウン」という言葉を聞かれました。

原子力発電において「メルトダウン」というと、炉心溶融(ろしんようゆう)を意味します。

 

炉心とは、原子炉の中心におかれている燃料棒の集合体、あるいは制御棒などの周りのものも含めたものを指します。

 

原子炉中の核燃料体が過熱し、多くの燃料集合体や、さらに炉心を構成する制御棒等も含めて融解する(溶ける)ことや、またはこの炉心が損傷することで生じた破片状の燃料が、原子炉冷却材の冷却能力を失わせ、高熱で融解することを「メルトダウン(炉心溶融)」といいます。

重大な場合は、放射性物質の外部への拡散を引き起こすこともあります。

 

さきほど原子炉の制御には、減速材・冷却材に軽水を使っているといいましたが、 臨界状態…つまり、安定して原子炉内で、原子核分裂の連鎖反応が一定の割合で維持されている状態ですが、この時に原子炉で発生した水蒸気を再度水に戻すための冷却水や、使用済みの核燃料を冷やすための冷却水が大量に必要になります。

(そのために原子力発電所は海や川の近くに設置されることが多いのです)

 

原子炉は緊急時や点検時などに、燃料棒の間に制御棒と呼ばれる放射線をさえぎる物体を置くことで、核分裂反応を停止させて原子炉を停止させます。

しかし、運転中にすでに発生している熱の余熱があったり、放射性崩壊によって崩壊熱が生まれたりするので、燃料棒はすぐには冷たくならないため、しばらくの間は余熱除去系のポンプを使用して冷却水を循環させて炉心を冷却し続ける必要があります。

この制御棒は、あの地震の時に原子炉に入っているので、あの時に原子炉が爆発するようなことはなくなりました。

ところが何らかの原因で、余熱冷却系の水の循環に不備が起こることなどで炉心の冷却を行われないと、燃料棒の高い余熱のために原子炉内で制御棒や燃料棒自体を溶かしてしまう現象が起きてしまいます。

これがいま「メルトダウン」という言葉で、新聞やニュースで話題になっています。


福島原発での最初の爆発は?

福島の原子炉が入っている建屋は、上部が吹き飛ぶほどの爆発をしました。

しかしこれらはメルトダウンによって原子炉そのものが爆発したのではなく、別の原因…つまり、燃料の中に熱を出すものがあり、その熱によって、温度が上がって水素ができ、その水素が爆発したということになります。

本来のこの建屋の中は職員が働いているのですから、爆発しても放射性物質が外に飛び散ることはありません。

 

しかし、周辺の放射性物質の濃度が高まったということは、この水素爆発の前にすでに原子炉の一部が壊れていて、そこからの放射性物質がすでに建物の中に充満していて、それが爆発によって飛び散ったと考えらるという説もあります。

メルトダウンというのは、燃料の温度が2500℃ぐらいなって、そのものすごく熱い塊が「ダウン(下に落下)」して行くことを意味しています。

この場合には、余りに温度が高いので、そのまま原子炉の底を破って下に落ち、さらに下のコンクリートにぶつかってそこで止まります。

 

このようなメルトダウンが、普段通りに正常に運転されている原子力発電所で起きると、大量の放射線を出します。

福島の場合で言うと、すでに放出された放射線の量は、この正常運転時に起きるメルトダウンでの量に匹敵しており、これ以上の溶融によって大量の放射線が発生する危険はかなり低まったとも言われています。

もちろん冷却を続け、炉心を冷やし続けることは大事なのですが、各種メディアに出てくる「メルトダウン」という言葉も、その意味するところや定義の仕方で大きく変わってくるので、自分自身での判断や見極めが重要と思われます。


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