#110 2018年9月 月が出来たから… どうなった? |
またまた? 中秋の名月ちょうど2年前の9月のかわら版( #088 2016年9月 中秋の名月 )で、お月さまの話をしたのを覚えていらっしゃるでしょうか? あの時は月の影響で満潮や干潮がおきることを中心にお話ししたのですが 、「 地球は約46億年前の太陽系が作られたときに出来たとされ、月はそれよりも6200万年後に出来た(らしい)という説が近年では有力視されています。」ということを書いていました。 もっとも、その出来かたにはいくつかの説があり、
ということも思い出していただいたら嬉しいです。 NHK「夏休み子ども電話相談室」7月から8月にかけてのNHKラジオといえば、全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)と、夏休み子ども電話相談室が定番で、特に子ども電話相談室では「そういう視点もあるのか…」と思わされることもしばしばです。 (最近はTVの「チコちゃんに叱られる!」もなかなか気づきにくいテーマをあつかっていて、そちらも楽しめます。)
その中で、「ジャイアントインパクトというのが大昔にあったのですが、本当ですか?」という少年からの質問がありました。 この「ジャイアントインパクト」というのが、(4)の他の天体が地球に衝突してその時に飛散したものが固まったという説 になります。
その質問に、コスモプラネタリウム渋谷解説員の永田美絵先生が答えていた内容が素敵だったのでご紹介しておきたいと思います。 先生のお話では、学界的にはこのジャイアントインパクト説は「あった可能性がとても高い」ということですが、すべて何十億年も前のことなので、現代から見るとやはり夢の広がる話になりますね。 ジャイアントインパクト説46億年とか、その6200万年後という時間の長さすら想像ができない時の流れなのですが、いずれにしても地球の誕生とほぼ同時期に月ができただろうというのが、定説になっています。
そもそも地球も地球となるため(惑星となるため)の前の段階があって、元々は「原始惑星」がお互いの重力の影響を受けながら衝突を繰り返して「惑星」になっていくと想像されています。 (地球の起源を探るということでは、 #075 2015年7月 冥王星までどんだけ〜!! もご覧ください)
ジャイアントインパクト説では、地球が地球になった46億年前からそう遠くない時に、この原始惑星が地球と衝突したと言われています。 その大きさは、火星(地球の約半分の直径)と同じぐらいの大きさで、斜めにぶつかったために、地球のマントルとともに宇宙に飛び散っていきました。 それは斜めにぶつかったために、多くの地球のマントルの破片とともに、それらは地球の周囲を回る軌道上に残り、それらが互いの重力の影響を受けながら合体して月が形成されていったというのが、このジャイアントインパクト説になります。 月が出来たから… どうなった?と、ここまではいわゆる天文学的な説明として、「なるほど」と思える話でしたが、永田先生のお話では「なるほど」が「へぇ〜」に変わって感動しました。
話を続けると、この破片が合体して形成された月は、月が月になるのに多くの時間はかからなかったようです。 その時間は短ければ1カ月程度から100年ぐらいの時間で完成すると、最近のコンピュータシミュレーションでは推定されています。 46億年という長い地球の歴史からみると、一瞬で「月」ができたと言えます。
月ができた最初の頃は、地球からわずか2万キロほどの距離にあったようですが、現在はそれがお互いの引力のバランスが取れる絶妙の距離の38万kmの彼方を回っています。
この月が出来たての頃の地球は、今よりもずっと早い回転で自転していたのですが、月ができたことでその回転にブレーキがかかり、ゆっくりと自転するようになりました。 また 前回 もお話しした、月の引力の影響を受けた「満潮」と「干潮」が起きるようになったことも、生命誕生の一つのきっかけになっていったということです。
太陽系の他の惑星(木星や土星など)の月の大きさを、母星となる木星や土星と比較すると、地球と月の大きさの比較は、むしろ異常なバランスとも言えます。 この46億年の間に、地球に対して大きすぎる月が、地球に対して様々な影響を与えてきて、今日の地球があるのだと実感します。
地球自体の自然環境は、温暖化や資源の枯渇など最近になって大きな問題になってきていますが、人間が住み、動植物に恵まれ、呼吸のできる空気が「ここ」にあるということが、月ができたことに始まり、月とともに地球が46億年かけて育んできたものであることを、あらためて思いました。
今年の中秋の名月は「9月24日」です。晴れた夜にはきれいな満月を仰ぎたいと願っています。 ひとこと言わせて!もしも月がもっと近いところにあれば、もっと大きな姿だったでしょうし、遠ければもっと小さかったことでしょう。 また、今の距離であってももっと大きい直径、小さい直径であったなら、その大きさも違います。
そのおかげで何年かに一度、地球のどこかで日食や月食が起きます。 特に皆既日食の時にはほぼ同じ大きさ(もちろん地球から見た大きさ)の月と太陽が重なることで、美しい天体ショーを私たち人類に見せてくれます。 それは偶然にその大きさと今の距離になったから としか言えませんが、何気なく魅了されているこの現象を見ることができるのは、なんて幸せなことなのかとあらためて思います。 |
|