先月は寒波についてお話ししたのですが、そのすぐあとで関東に大雪が降りました。
それを一息つく間もなく、今度は北陸を中心に交通もマヒするほどの大雪となり、もう異常気象が異常というだけではなく、気候そのものが両極端になってきているような気がします。
かたやインフルエンザも300万人近い感染者数だとか…。
うがい・手洗いを励行して十分にご用心下さい!
A、B、AB、O といえば…
ご存知の「血液型」です。
「ウチはお父さんがA型、お母さんもA型なんで、私も弟もA型。でも妹はO型なんだよね…」というようなご家族でも心配はありません。
まずは簡単な血液型の分類として一般的なABO型で説明すると、血液型は両親から一つずつもらうA/B/Oの組み合わせで決まります。
両親もまた、その両親(祖父/祖母)から一つずつ因子をもらっていますので、その血液型が決まっています。
最初は簡単に説明するために「因子」という言葉で、3種類の記号(
●:A因子 ◎:B因子 〇:O因子 )を使ってお話しします。
このそれぞれの因子には力関係があって、
「●:A因子」 と 「◎:B因子」は等しい力関係になります。
それに対して
「〇:O因子」 は 「●:A因子」
にも 「◎:B因子」 にも弱い力関係になります。
この3種類の因子は、お父さんからもらう1つと、お母さんからもらう1つの、合わせて2つの因子の組み合わせで血液型が決まります。
以下では、お父さんからもらう因子を左側に大文字で、お母さんからもらう因子を右側に小文字で書きます。
A型を例にした場合、
「父+母」=「●+●(Aa)」はもちろんA型になりますが、
力関係の弱い「〇:O因子」と結びついた
「●+○(Oa)」
も 「○+●(Ao)」
もA型になります。
B型も同様で、「◎+◎(Bb)」「◎+○(Bo)」「○+◎(Ob)」で、いずれもB型になります。
それでは、お父さんから「●:A因子」、お母さんから「◎:B因子」をもらった場合はどうなるでしょう?
その場合、
「父+母」=「●+◎(Ab)」で力関係の等しいA因子とB因子の組み合わせなので、AB型になります。
逆の組み合わせの「◎+●(Ba)」も力関係が等しいので、AB型になります。
O型は、お父さんとお母さんから「O因子」をもらった場合だけO型になります。
なぜなら、O因子は、「A因子」 と
「B因子」との組み合わせになった場合に、そちらの血液型が出てしまうので、「○+○(Oo)」の組み合わせだけがO型になる条件だからです。
冒頭の「ウチはお父さんがA型、お母さんもA型なんで、私も弟もA型。でも妹はO型なんだよね…」というご家族の場合、お父さんもお母さんも
AOの組み合わせのA型ならば、「私」と「弟」がA型、妹が両親から
O因子を受け継いだO型ということは十分にあることになります。
この場合、両親から生まれる子どもの血液型は、「Aa(A型)」「Ao(A型)」「Oa(A型)」「Oo(O型)」の4種類の組み合わせになるので、理論上の確率としては
A型が4分の3、O型が4分の1生まれることになります。
もし、両親のどちらかがAaまたはaAのA型であった場合には、O型の子どもが生まれることはありません。
ここまで「因子」という言葉で説明しましたが、実際にはそういう「因子」で分類されるのではなく、血液の赤血球の表面にある「A抗原」「B抗原」で分類されます。
A型は赤血球の表面にA抗原をつくる遺伝子があり、血漿(けっしょう=血液を構成するもの)の中にB抗原に対する抗体が作られます。
簡単に言うと、A型の人にB型の血液を輸血しようとすると拒否反応を示すということになります。(A抗原を持つと、B抗原に対しての拒否反応を起こします)
これは同じように、B型は赤血球の表面にB抗原をつくる遺伝子があり、血漿の中にA抗原に対する抗体が作られます。
それではO型とAB型の場合はというと、
O型はどちらの遺伝子も持たないため、A抗原・B抗原に対する抗体が作られ、A型/B型のどちらの輸血もできません。
またAB型はどちらの遺伝子も持つので、血漿中にA・B両抗原に対する抗体は作られません。
どちらの抗原をつくる遺伝子のない血液型はO型になります。
ですから、AB型にはA抗原にもB抗原にも拒否反応が出ません。
O型では、A型、B型、AB型のいずれの血液型にも拒否反応を起こします。
(拒否反応が出ないということと、輸血ができるということとは別と考えるべきです。輸血が必要な状況の時には、あくまでも本人と合った(後述のRH±や特殊な血液型を含めた)血液型の輸血が行なわれるべきです。)
ABO式血液型
このABO式の血液型の分類は、いまから約100年前に発見された、最初の血液型の分類方法(赤血球による分類方法)になります。
このABO式血液型のもとには「フコース」というH物質(糖の一種)が抗原であり、それが赤血球にA抗原・B抗原として結合しています。
ところがまれにこのH物質がない血液型の子どもが生まれます。
その場合は、どちらの抗原も赤血球に結合できないため、両親の血液型に関わらず、「抗原の遺伝子を持たない血液型=O型」になります。
AB型同士の両親でもO型の子が生まれる可能性
この血液型を「ボンベイ型」といい、名前の通り、最初にインドのボンベイ(ムンバイ)で発見されたことから、名前がつきました。
両親がともにO型の因子をもたなくても、子どもが「O型」で生まれるという非常にまれなケースが起きることになります。
ドラマの中の輸血シーンなどで、「この人はRh-のAB型だから普通のAB型じゃだめだ!」というような、希少種の血液型が話題になります。
この「Rh-(Rh+)」というのも、ABO式とは別の血液型分類になるのですが、日本人ではおよそ200人に1人が「Rh-」と言われ、さらにAB型はおよそ10人に1人ですから、「Rh-AB型」という人は2000人に1人という非常に少ない人数になります。(日赤赤十字血液センター資料)
ところがこのボンベイ型は桁違いに少なく、およそ100万人に1人となり、日本全体でもおよそ130人ほどしかいらっしゃいません。
(統計的な数値で実数は不明。ちなみに同じ計算だと「Rh-AB型」の人はおよそ6万5千人になります。)
O型は元々A・B両抗原に対する抗体を持つため、O型以外の輸血はできませんが、それに加えてボンベイ型の場合はH物質に対しての抗体もあるため、ボンベイ型→ボンベイ型以外の輸血はできません。
このボンベイ型のように通常はありえない血液型が子どもに出るケースとしてはシスAB型(ABとOの両親にAB型が出るケース)などもあり、実子かどうかということで裁判になるケースもあると聞きます。
(現代では別の検査法=DNA鑑定が主流になっているので、血液型よりもDNAで判断されることが増えると思われます。)
とても少ない可能性ではあるものの、「あり得ない血液型もあり得る」という一つの可能性は、知っておいた方がよさそうですね。
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