#096 2017年7月 東京のみずがめ |
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先月のかわら版で「少し遅めでしたが関東地方も梅雨入り…」とお知らせしましたが、今年はまったく梅雨らしくなく、二日として雨が続いたという覚えがありません。 カレンダーを見ないと今が何月なのか、うっかりすると8月かと勘違いしてしまいそうです。 かなり高温多湿な気候ですので、もちろん熱中症にも、日常の健康管理にもお気を付けください!! カラ梅雨だと心配なのが水不足降り続けるとイヤな雨ですが、こんなに雨が降らないでいれば、言うに及ばず心配になるのが「水不足」です。 さすがに1400万近い住民を抱える東京都ですから、水に関する行政も津々浦々まで水道のない地域はないと言ってもいいぐらいのですが、それでも水は天からの授かりもの。 蛇口をひねれば当たり前に出てくる水は、どこから流れてきているのでしょう?
よく「利根川水系の水が東京に来ているんだよ」とは言うものの、ちょっと気になることというわけで、これを調べてみました。 (利根川水系上流に大雨を降らせた2015年9月の「 #077 2015年9月 こんな水害は見たことない…!! 」も併せてご覧ください) その前に日本の地形の特徴日本の国土の中心ともいえる本州と北海道・九州・四国の4島。 この日本列島は、東西南北ともに約1000kmの四角い枠の中に納まり、右上に北海道、左下に九州を置いた、弓型の形をした、中央部に2000mを超える急峻な山々をもつ国土です。
この国土に流れる日本の河川も、世界の大陸に流れる河川と比較すると、実は全体的に「大きな高低差」を「短い距離」で流れるという特徴があります。 アメリカのコロラド川は約1000kmの長さがあっても水源との標高差はわずか600mですが、日本で最長の信濃川は367kmという長さに対して、水源からの標高差は約1500mあるため、私たちの目から見ればゆったりとした信濃川の流れでも、それはなかなかの「急流」であり、水利用をするのには有利とはいえません。
日本の気候は温暖であり、アジアモンスーン地帯に位置するため、年平均の降水量は約1690mmあり、世界の年平均(810mm)の約2倍あります。 関東の臨海部の年平均降水量も約1570mmですから、ほぼ全国平均と同じといえます。
そして日本の水道水の源となるのは、その全部が空から降る雨で、それが湖水に降り、地下から湧き出た水が川となって、海へと流れていく中で私たちが利用しているのです。 東京へは二つの河川からしかし、東京都に降った雨がそのまま水道水になるというわけではなく、実際は東京とはかけ離れた場所に水源があり、それを天然の河川に流す過程で量を調整しながら、水道として活用しています。 この中心になる二つの河川が、「利根川」と「多摩川」になります。
利根川は群馬県みなかみ町を水源とし銚子で太平洋にそそぐため、東京とは無縁のようですが、利根川に合流する鬼怒川や、分流する江戸川・中川を含めて「利根川水系」と呼んでいます。 もう一つの多摩川は、奥多摩の奥の山梨と埼玉の県境を水源にし、東京の西部を流れた後に神奈川との県境を流れて大田区の羽田(対岸は神奈川の川崎市)で東京湾にそそいでいます。
なぜ多摩川水系の水が全体の2割の使用に留まっているかというと、通常の大東京が使う水は「利根川水系」の水でまかない、「多摩川水系」の水は大きなカメでもある、奥多摩湖(小河内貯水池)と狭山湖や多摩湖(山口/村山貯水地)にできるだけ貯水して、水の需要が多い夏季や利根川・荒川水系の水質事故や渇水期にこの貯蓄した水を融通するように利用しています。
図では多摩川水系の貯水池を中心に描きましたが、もちろん利根川水系にも、「矢木沢ダム」「下久保ダム」「草木ダム」「奈良俣ダム」「渡瀬貯水池」や、荒川の水系では秩父に「浦山ダム」「滝沢ダム」や「荒川貯水池」があり、水量の調整に役立っています。
つまり 東京で水不足が起こるとすれば、これらのダム湖のある群馬県や栃木県・埼玉県内に降る雨に左右される ことになります。
ですからこの地域の雨は大変重要なのですが、最近は「降れば土砂降り」のように、今年も九州で甚大な豪雨被害が出ました。 関東でも 2年前の鬼怒川決壊 は記憶に新しいところです。
水不足は困りますが、さりとて水源近くに住む人たちが安全に暮らしながら適度に雨が降ってくれることを心から願うばかりです。 |
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