ちょっと誤解してた「偏西風」
先月、ネタ探しということでお話をしましたが、この異常気象に絡んで、天気予報の中で「偏西風の影響」とか「偏西風が蛇行しているため」という言葉が出てきます。
ちょっと気になっちゃいました。
実は偏西風については、ジェット気流という言葉で、西行きの飛行機(アメリカ→日本に向かう方向)だと、東行きの飛行機(日本→アメリカ)よりも実際の飛行時間が長くなるということも、そしてそれは偏西風の影響で長くなるということも体感的に知っています(注)。
たぶん、昔に中学校の理科で勉強したはずだったのですが、人の記憶力の都合のよさというか、実は私はこんな風に覚えていました。
「地球の自転があるから偏西風が起きる」
ところが冷静に考えてみると、東京より九州の方が日の出も日の入りも遅いということは、地球は東に向かって回っているわけですよね?
そしたら、地球の回転に取り残される空気が風になるなら東風でないといけない...
あれれ?
調べてみました「偏西風」
実はこれがまったくの誤解でした...。
少なからず地球の自転は関係するのですが、それよりも偏西風が起きる大きな要因は、南の高気圧と北の低気圧にあったようです。
つまり、赤道の方の高気圧と北極の方の低気圧に関係するということです。
空気はご存じのように、気圧の高い方から低い方へ流れるので、単純には南から北へと
流れていきます。
ところが、台風の時の衛星からの写真を思い出すと、台風は左巻きに渦を巻いていまし
たよね?
この渦ができるところに、地球の自転が関係していたのです。
(そこを端折って、偏西風=地球の自転で起きると覚えちゃっていたんですね...)
ですから、北の低気圧と南の高気圧がぶつかるところでは、図の中の渦に描いた矢印の方向に、低気圧では風を巻き込み、高気圧では風を吐き出しているのです。
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それじゃ南半球では?
日本列島がある北半球では、ご存知のように台風は左巻きですが、これが南半球にいくと右巻きになります。
これは地球が回る力(自転)の影響です。
トイレの水を流しても、洗面台の水を流しても、日本では気にもしない左巻きの渦ですが、南半球にいくと右巻きです。
したがって、鏡に映したように考えないといけないのですが、日本とほぼ同じ緯度(赤道からの離れ具合=角度で表します)にあるオーストラリアでも、やはり偏西風(西風)になります。
ですから主だった国がある中程度の緯度では、極部の方にある低気圧と赤道の方にある高気圧に挟まれて、偏西風が吹いていると言えます。
それじゃ赤道近くでは?
先ほどの図よりも下の方の赤道ではどうなるでしょうか?
実は、赤道で熱せられた空気が図の高気圧を作るため、赤道付近は赤道低圧帯という、やはりこの高気圧から風が流れ込むことになります。
ですから、北半球だけを考えると東風…と思いますが、南半球から来る風とぶつかってくるので、北半球では北東から、南半球では南東からの風になります。
これを「貿易風」といいます。
まだ帆船が主力の大航海時代は、この偏西風と貿易風を上手に利用することで、航海のスピードアップをはかりました。
(注) できるだけ分かりやすく説明をするために、諸処の学説通りではない部分もあります。
学説によっては地表付近の偏西風と上空のジェット気流を分けて考える場合もあります。
また極偏東風や高緯度低圧帯など、説明が煩雑になるためここでは省略したことをお許しください。
番外:今月の面白かった本
最近読んだ本で、田中修さんの「植物はすごい(中公新書:税別840円)」が面白かったです。
「動物は自分で動いて食べ物を探しに行かないとならないけど、植物は光合成で自分で栄養を作れる」、「植物は地球上のすべての動物に食料を賄うすごさがある」、「植物は食べつくされない知恵と工夫をもっている」等々。
科学とか理科とかで敬遠しがちですが、とても楽しく読めました。
何気なく見過ごしている植物が、実はとんでもなく巧妙に生き抜くすべを備えて、子孫を残しているんだという生命力のたくましさに、ちょっと驚かされますよ!!
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