2016年9月 二重国籍のこと

マボロシの… No.088

 

今年は台風1号の発生が例年になく7月と遅かったのですが、この2か月半で16号と、台風シーズンも終わりに近づく頃には、帳尻だけは合って来そうです。
今年は天気が悪く中秋の名月を東京では拝めませんでした。昨年のお月見の時は、ちょうど日本旅行中だった中国人の友人に「月餅」を振る舞ったことを思い出しました。

★ 民進党代表選に前後して ★

今月のテーマを探している時に、民進党の代表選に前後して蓮舫議員の二重国籍の問題が取りざたされました。

まず素朴に思った疑問は、「二重国籍で(国会を含めて各種の)議員ってなれるの?」って事です。
蓮舫さんはすでに参議院で三期当選をされており、また帰化してるという認識だったので、問題はないと思っていたからです。 ですから、ここに及んで二重国籍だとしても、日本の国籍もあるのだから問題はないのでは… という考えが浮かびました。

これについては、公職選挙法で「日本国民」であることを条件に被選挙権が定められていますので、議員で選ばれることに問題はないことが分かりました。
ところが一方で、「日本は二重国籍を認めていない」国であるため、今回の一連の問題が取りざたされたように思えます。

それではこの「二重国籍」が分かれば、少しは今回の蓮舫さんを取り巻いていた問題が理解できるのかと思い、少し調べてみたら、これが意外と一筋縄ではいかないことでした。

★ 二重国籍って? ★

多くの場合は、父母のどちらかが日本国民であれば、その子どもは日本国籍を持つことになります。

これを「血統主義」といい、以前は父方が日本国籍であることに限られていましたが、1985年の国籍法の改正でどちらかの親が日本国籍を持っている人は、父方でも母方でもどちらかの国籍を選べるようになりました。日本は、この血統主義を採用しています。

これに対して、「出生地主義(生地主義)」という国籍の考え方を採用している国もあります。
これは親の国籍に関係なく、出生地をその国籍とするという考え方で、代表的な国としてはアメリカ合衆国がこれを採用しています。
まれに新聞記事にもなりますが、アメリカの航空会社の機内で生まれた日本人夫婦の赤ちゃんが、アメリカ国籍を取得するというのは、このケースになってきます。

蓮舫さんは1967年の生まれで、父方が中華民国(台湾)の国籍のため、1985年までの国籍法に基づくと母方(日本人)の国籍を取得できないため、中華民国の国籍になったと思われます。
その後17歳の時にお父様と台北駐日経済文化代表処(在東京中華民国大使館) で手続きをしたが、これが出来ていなかったという事のようです。

★ 二重国籍の問題点 ★

世界では、「血統主義」の国と「出生地主義」の国があるために発生する二重国籍ですが、日本は二重国籍を認めないとしながらも、なぜ現実に二重国籍が発生するかというと、問題が国と国同士のことであり、日本が二重国籍を認めないから単純に相手国の国籍を放棄できるかというと、その部分は相手国の法律に基づき、そこには日本の司法の力が及ばないという問題があります。
具体的には、イランやブラジルは国籍の放棄を認めないため、元プロ野球ヤクルトの選手だった日系ブラジル人の松元ユウイチさんは、2004年に日本に帰化して日本国籍を取得したものの、ブラジル国籍を放棄できないため二重国籍となっています。

この相手国のことがあるために、日本の法務省としても二重国籍となっている人に対しては、日本国籍取得時に二重となる相手国の国籍の放棄については、本人申告の努力義務に留まらざるを得ません。
しかし二重国籍であったとしても、日本国籍を有した日本人としての様々な権利や義務については、当然平等に扱われます。
ですから、教育や納税、就職等についても平等です。しかし…

★ まったく問題がないわけでもない ★

この権利は国家公務員の採用においても、日本国籍を有してれば問題はないはずですが、外務省の採用では採用の要綱にも、二重国籍ではダメということが書かれています。
これは外務公務員法7条に「…国籍を有しない者又は外国の国籍を有する者は、外務公務員となることができない」とされており、また外務省に仕事上出向する可能性がある他の省庁の採用にも影響します。

外務省の採用要綱の注意書きには

「本人が外国で生まれた場合,あるいは出生の時点で父または母が外国の国籍を有していた(二重国籍者を含む)場合には,日本にある当該国の大使館か領事館に照会する等,外国国籍の有無について確認してください。外国の国籍を有している場合には速やかに離脱の手続きをとってください。」

とあり、同じところに書かれた「外務省の所掌事務」では外務省の仕事について、

「…日本の安全保障・対外経済関係・経済協力・文化その他の分野における国際交流などに係る外交政策,外国政府との交渉・協力,国連等国際協調の枠組みへの参加・協力,条約・国際約束の締結,国際情勢に関する情報の収集・分析・調査,日本国民の海外における利益の保護・増進,海外における邦人の生命・身体の保護,政府開発援助全体に共通する方針に関する関係行政機関の行う企画の調整などに関するもの…」

とあります。

ここで合点がいきました。

二重国籍だった時に、その二国間で紛争が起きた時に、どの立場を取るのかということは、確かに問題になります。
調べているうちに、普段は気にしていなかったに国籍の問題は、実はけっこう根深いものがあったのだと気づかされました。