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#093 2017年4月 夜間中学校

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先日NHKの夕方のニュースを見ていたら、「夜間中学校」について取りあげていました。 

俗に「夜間中学」というと、戦後から昭和30年代にかけての混乱した時期の二部制授業や、家庭の事情などで中学校に通えなかった人たちのための中学校というイメージが強いものですが、最近はそのイメージとはかなり変わってきており、興味深いものがありました。


戦前の夜間中学

そもそも夜間中学校というのは、戦前にも「中学校(尋常小学校の次の教育課程)程度の教育を施す」目的で設立されていましたが、当初は卒業しても資格を得られない「私塾」や「各種学校」と同じ扱いで、社会的には中学校(旧制中学校)と同等とはなかなか認められないものでした。

しかし、のちに現在の大学入学資格検定(大検)にあたる「専門学校入学者検定(専検指定)」という制度ができ、正規の旧制中学校と同じぐらいに社会的に認められるようになりました。

 

この戦前期の夜間中学の目的は、家庭の事情などで進学できない子どもの救済というよりも、明治・大正・昭和と変わる時代の中で、急成長する就学率に対応するために、夜間にも開校するということの方が主だったといわれています。


戦後の中学校の二部授業

通称として「夜間中学」「夜間学級」と言われていますが、正式には昼間に授業を行っている中学校が、昼間と夜間との二部制に分けて授業を行っているというのが正しいようです。

 

そもそもは戦後の混乱期に、義務教育である中学校までの教育期間を、家庭の事情などにより満足に通えなかったために、あるいは昼間に働かざるを得ない児童に、教育の機会を与えるということで、第二部の授業に目的がありました。

 

また、戦後の復興期の学校の不足と、その後(昭和22/23年ごろ=1947/48年ごろ)のベビーブームでの教室の不足からも、地域によってこのような「中学校の二部制」の形態が取られました。

ちょっと現代の公立中学校では考えにくいことですが、戦後の復興期や学校不足の混乱期にはこのように午前と午後で一日に二度授業を行う二部授業は頻繁に見られたということです。


入学資格

特別な事情がない限り、一般的には小学校を卒業して昼間の中学校に入学して卒業することで、義務教育を修了します。

ところが、文字の読み書きができない、中学校途中までは在籍したがその後の教育を受けていないなど、人それぞれの様々な事情は、必ずしも卒業と教育程度を身につけているという事とは一致しません

 

現在では、この夜間の授業を受けるための入学資格を明確に定めた法律は存在していませんが、一つの基準として、「義務教育を終了していない」「満15歳(中学卒業の学齢)を越えている」といった人を対象としつつ、2015年からは文部科学省の通知で、「出席日数が足りずに卒業した者も個別に判断」して入学することを認めています

 

また「在留資格を持つ外国人」の人も入学することを認められ、本国で受けきれなかった教育を受けている方が多いというのも、近年の夜間中学校の傾向といえます。

その比率は半数を超え、多いところでは90%近くに達するという学校もあります。


夜間中学校での授業

夜間中学校というのは、法律的に昼と夜の二部に分けて授業を行うとことを利用した開設のため、定時制高校のように授業の課程が決められているわけではありません。

そしてこの夜間中学校に入学する方たちは、年齢、性別、国籍、過去に受けた教育の到達度等が同じということもありません。

 

ですから単純に1年生、2年生という年齢別の授業ではなく、「習熟度別授業」になってきます。

 

つまり、足し算/引き算から始める人もいれば、方程式から学び直すという方もいます。

そして、在留外国人の人が増えてきている現状では、「日本語学校」という側面もあります。


教育機会確保法

さて昨年の12月に、この夜間中学校を別の側面から支援できる法律が制定されました。

それが「教育機会確保法(正式名:義務教育の段階における普通教育に相当する教育の機会の確保等に関する法律)」です。

 

かつては、家庭の事情や本人の就労事情などに起因することが多かった「不登校」の問題も、現代まで時代が下がるとその理由の上位にくるのが、「いじめ問題」や「勉強についていけない」、また「精神的な疲弊」等で、長期欠席になるケースです。

 

病気と経済的な理由を除いて30日以上の欠席をした小中学生は約12万人以上にのぼり、全体的な児童数が減少傾向にある中で、ここ3年間では毎年1割ぐらいの率で増えてきています。

この不登校だった児童の受け皿として、夜間中学校が見直されてきています。

 

かつての夜間中学校のピークの数は、全国で90校近くありましたが、現在では東京と大阪の近郊に集中した31校まで減少しています。 今後はフリースクール等の活用など、柔軟な対応が求められています。


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