#104 2018年3月 裁量労働制

 

この冬のかわら版は、暖かいと書いたり、大雪と書いたり、気候が安定しないままに過ぎたような気がします。
やっと3月も中旬になったら今度は急激に春めいて暖かさが増してきましたね。

このかわら版をご覧になるころ、東京では桜の開花宣言が出ているかも知れません。

春… 花粉の季節でもあります。すでに辛い思いをされている方も多いかと思いますが、ガマン!


★ 裁量労働制って? ★

結果としてデータに不備や間違いがあったために、今国会での法案通過が見送られた、いわゆる「働き方法案」ですが、その中でもキーワードのように語られていたのが「裁量労働制」という言葉でした。

「ああ、(モヤモヤ)こんな感じの働き方だよね〜」という感触はあったのですが、それじゃ具体的に説明しようとすると、「こんな仕事の人たちだよ」とは言えても、それがなぜ残業規定から外れることを法制化するのかというと、ちょっと心もとなくなってきます。

「裁量」+「労働」=その人の「裁量(能力、判断)」にまかせた「労働」

ということになるのですが、果たして本当はどういう意味を含んでいるのでしょうか?


★ そのまえに「労働」って? ★

一般的に「人」は「社会」の一員として生活しています。
もちろんその中には自分で生活を賄えない幼児や学生の人もいますが、いずれは社会の一員として何か「働き」ながら生活をしていきます。

その時に、世界とか日本とかの大きな社会ではなく、一番身近な社会になるのが「仕事場」になります。
仕事場は、会社であったり役所であったり、あるいは農作業や漁業の場であったりしますが、たいていは物やサービスを売り買いすることで生まれた利益から「報酬(給料)」をもらうことで生活が成り立ちます。つまり…

自分の力(労働力)を売って、その対価に報酬(給料)をもらう

ということが基本になります。

それでは誰がその労働力を買っているのかというと、これはその会社の持ち主の人たちになります。
それでは農業や漁業の人たちはというと、これは多くの場合会社と比べると組織が小さく、親方と呼ばれる人であったり、その農家や漁師の人自身が労働力を農作物などの商品として売ることで得た売り上げで、自分に対して報酬を払っていると考えることもできます。

いずれにしても、個人が発揮できる労働力は誰かに売ることができ、それは給料という形で報酬になるというのが、資本主義の基本的な考え方です。

この時の「個人」を「働者(従業員)」といい、その労働力を買う「誰か」を「使用者(事業主)」といいます。


★ 給料を払うんだから! ★

使用者にしてみると、「給料を払うんだからもっと働いて、たくさん会社に利益を落としてほしい」と思うでしょうし、労働者にしてみると、「もっと稼ぐには残業を増やせばいい」とも考えるでしょう。

ところが人間がやることである限り、一定の基準を設けないと身体が参ってしまいますし、個人の生活も破綻してしまうことになります。

そこで「労働基準法」という法律があり、星の数ほどもある会社がそれを守れているかを監督するために「労働基準監督署」があります。(余談ながら、「署」のつく役所には捜査権があります。)

この労働基準法は、労働条件に関する最低基準を定めた法律で、1947年(昭和22年)に制定され、その後に何度も改正されてきている法律です。

その中の労働時間に関する部分では、「一日8時間まで、週40時間まで」ということと、休日に関しては「週1日」というのが決められています。
ただし、業態によって24時間営業、年中無休の会社があるように、労働者(従業員)に一斉にこれをとるような仕組みにする必要はなく、そのためにシフト制があったり、ずらして休日を取るような仕組みも認められていますし、業種の都合で週40時間を超えない範囲で8時間×5日が、例えば10時間×4日という勤務形態も可能です。
またこの労働基準法第36条には、労使(労働者と使用者)の合意によって労働基準監督署に届けることで、時間外・休日労働について労働時間の延長と休日労働ができるとした規定もあります。
(通称「サブロク協定」。ただし無制限に可能にするわけではない)

サブロク協定では残業・休日労働の限度時間が決められていますが、次の分野では業務の性格から限度時間が適用されません。

・工作物の建設等の事業 ・自動車の運転の業務

・研究開発の業務 ・季節要因などによる業務量の変動の大きい業務


★ 裁量労働制の概略 ★

このように、始業9時〜終業18時(休憩1時間含)土日休みという1日8時間労働が定着している職種で、19時まで働くと残業1時間となり、実労働時間に応じて割増賃金(残業手当)が支給されます。
裁量労働制とは、この実労働時間ではなく8時間あるいは9時間といった「みなし労働時間」で労働時間を管理する制度です。
これには、「研究開発」「IT(システム・ソフトウェア等)の設計」「取材・編集」「デザイナー」「公認会計士などの士業」などの専門職と、企業の中核部門で企画立案に従事するような企画業務も当てはまってきます。

つまり、労使合意でこの裁量労働制で労働条件が決まると、実際に9時間、11時間働いても、最初に決めた「みなし労働時間」に対する賃金だけを払えばよく、それは使用者側にとっては給与を固定できるメリットであり、労働者側にとっては時間環境が悪くなる要素をもった制度です。
ただし、「みなし労働時間」で決める給与に、ストレスや職務への責任が含まれた高い給与であることも多いので、働き方が多様化している現代における、一つの方向性であるともいえます。