#016 2010年4月 桜の季節に散った、元プロ野球選手

 

 桜の季節に散った、元プロ野球選手 〜

2010年4月7日。昨年まで読売ジャイアンツで活躍された木村拓也コーチがお亡くなりになりました。
享年37歳。今年から現役選手を退きコーチに就任され、その技術や想いを若手の選手に伝えきることもままならず、亡くなるにはまだ若すぎる生涯だったと思います。

ここに生前のご活躍を偲び、心よりご冥福をお祈り申し上げます。

木村コーチの人となりや球歴については、新聞やテレビ等で報じられているため、ここでは詳しくは書きません。

木村さんの突然の訃報が、私たちに一番ショックであったのは、試合前のグランドでの練習中に「くも膜下出血」で突然倒れ、そのまま還らぬ人となってしまったということでした。

どんなにか身体を鍛えて毎シーズンに臨み、常人よりもはるかに高度な体力だったであろうと想像に難くありません。


 突然に襲い掛かる激しい頭痛や嘔吐 〜

木村さんは、4月2日午後5時40分頃、広島での広島東洋カープ戦の試合前に、味方の守備練習中に倒れ、意識不明の重体に陥りました。

すぐにAEDでの蘇生処置を受けた後に広島大学病院に搬送され、入院し、検査の結果、「クモ膜下出血」と診断されましたが、この搬送された時点で、すでにグレード5(*)の最悪の状態であったと伝えられています。

しかし介護の甲斐もなく、そのまま意識は戻らずに、4月7日午前3時22分に木村さんは息を引き取りました。

 

(*) くも膜下出血の重症度の分類としてグレード0からグレード5までの分類があり、グレード5では「深昏睡、除脳硬直、瀕死状態」とされます。

 

木村さんの言動や行動からは、前兆らしきものはほとんどなかったものの、広島入り直前に「ひどい頭痛に見舞われて、2時間ぐらいしか眠れなかった」ということをお話しになられていたと伝えられています。

 

くも膜下出血の場合、よく「激しい頭痛」「嘔吐」ということを耳にしますが、これはまさしく経験したことのないような痛みであったり、バットで殴られたようなと表現されるほどの痛みを伴うととも言われています。

しかし、そのようにはっきりとした症状が出るのは全体の1/4とも1/3とも言われており、出血が少ない場合には頭痛はそれほど強くない場合もあるそうです。

特徴的なことは「突然」これが起きることであり、風邪を引いた時のような「朝からなんとなく痛い」というのとは異なり、「××をしている時、突然に…」というケースが多いようです。


 くも膜下出血とは… 〜

クモ膜下出血(くもまくかしゅっけつ、くもまっかしゅっけつ)は、頭の中のクモ膜と軟膜の間の空間(クモ膜下腔)に出血が生じ、脳脊髄液中に血液が混入した状態をいいます。

脳卒中の全体の8%を占めており、高齢者よりも壮年期の人に多いとされています。またくも膜下出血は、一度起こると再発しやすいという特徴があります。

この原因の多くは脳動脈瘤の破裂(約80%)によるもので、その他では頭部外傷、脳腫瘍、脳動静脈奇形や脳動脈解離の破裂によるものなどがあります。

脳動脈瘤(のうどうみゃくりゅう)とは、動脈の壁の薄い部分(血管の薄い部分)が瘤(こぶ)状に変化したもので、大きさは1mm程度から30mmを超える大きなものまで様々です。

そしてこの瘤状になった部分は破裂しやすく、その多くが「くも膜下腔」にあるので、くも膜下出血の最大の原因と言われています。

この脳動脈瘤を持つ人においては、運動、怒り、興奮などによって脳への血圧が上昇すると、動脈瘤の一部が破れて出血を起こしてしまいます。

 

この出血はほんの数秒でありますが、血液は急速にクモ膜下腔全体に浸透してしまいます。

くも膜下出血もまたご多分に漏れず、喫煙、高血圧、アルコール類の多量な摂取などが、遠因となる場合が多いそうです。


 合併症の危険 〜

くも膜下出血の合併症としては「再出血」「脳血管攣縮」「心血管系の合併症」「尿崩症」「正常圧水頭症」と様々ありますが、なかでも怖いのは「再出血」です。

 

再出血は脳動脈瘤の破裂によるクモ膜下出血の約20%で起こり、特に発症後24時間以内での発生が最も多いとされています。

再出血を起こすとその後の容態の予測が難しく、最悪の場合も想定しなくてはならないこともしばしばあるようです。

 

くも膜下出血の重症度についてはグレード0〜5で表すと言いましたが、その分類の仕方は次のようになっています。

この分類で、グレードで3以上の症例では発症の数時間以上前に弱い頭痛を経験している患者が見られていて、「それ自体が最初の出血で、致命的となった出血は実は再出血である」可能性も一部では言われています。

 

最初の出血で1/3が死亡すると言われている「くも膜下出血」。
更に血管攣縮や再出血の影響が加わり4週間以内では約半数が、10年以内では60〜80%が死亡するとも言われています。

壮年期の人が突然襲われても不思議はない病気でありますので、くれぐれも普段からご注意いただき、おかしいなと思ったときは、必ず専門医にご相談するようにしましょう。